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会社員もフリーランサーも会計の知識は必要ってホント?
ビジネスに関わっているどんな人でも、お金のことについて関わらない人はいませんよね。
とくに、会計については経理部門の人でなくとも一定の知識は必要です。
とはいっても、ゼロから勉強するのは面倒だしどこまでやったらいいかもわからない。そんなふうに思って、ずっと手つかずになってるひとも多いのではないでしょうか。
まずは財務三表を知ろう
この記事では、経理部門以外のひとならこの程度の理解で十分やっていけるというレベルで、会計の中でもとくに財務会計の入り口の知識についてシリーズでざっくり説明します。
今回はビジネスだけでなく投資でも役に立つ、財務三表を中心にざっくり解説します。
わたしと会計の関わり
わたしのキャリアはビジネスマンとし20年、投資家として15年ほどになります。
ですが何を隠そう簿記の資格なんて1つも持っていません。MBAで会計の単位は取りましたので、その勉強はしました。
ですが実際の現場では、これから紹介するざっくり理解をベースにして十分以上にビジネスできています。
私が勉強してきた中で、経理部門以外の人材として実務を通じて最低限必要と思われるエッセンスだけをご紹介するシリーズです。
この記事の要約
・財務3表は大枠の理解だけで十分使える
・もっと深くでもさっと理解したい人のための書籍3選
そもそも会計って何?
会計とは、企業の業績を測るために取引の損益や財産の状況を記録するものです。
大雑把には、会計にも2つの種類があります。
一つは、投資家や融資をしてくれる銀行など社外の利害関係者(ステークホルダー)に向けて企業の業績を報告するための財務会計。
もう一つは、会社の舵取りをするため主に社内向けにまとめられる管理会計です。
この記事では、財務会計の基礎中の基礎をさらにざっくり紹介します。
会計これだけわかれば十分 面倒なのはあとまわしOK
さて、では会計を勉強しようと思ったらどこから始めましょうか。
多くの人がなんとなく考えることは、日商簿記3級辺りから資格でも取ろうということではないでしょうか。
あなたが経理部門でないなら、ちょっと待って下さい。
簿記って本当に必須のスキル?経理部門以外に簿記はいらない
ところで簿記ってなんでしょうか。
簿記は、企業規模の大小や業種、業態を問わずに、日々の経営活動を記録・計算・整理して、経営成績と財政状態を明らかにする技能です。
出典:商工会議所の検定試験
簿記って、経営活動を記録する単なる技能なんです。
もちろん知っていても損は無いでしょうが、果たして必須って言えるでしょうか。
会計士を目指すわけでもない、ましてや非経理部門の人間が、簿記の資格のために貴重な時間を割いて電卓技を磨くのは無駄中の無駄です。プロ野球が好きだからと、トライアウトに参加するようなもんです。
簿記の詳しい知識はなくとも、会計の概念を理解する事はできます。
まずこの段階で知っておけばよいのは、「お金はその使われ方によって仕訳されて記録される」ということくらいです。
財務三表ってなんぞ
さて上記の通り財務会計は、一定期間の企業の業績をまとめてステークホルダーに報告する事を目的にしています。そのために主に3つの書類が作られます
- 貸借対照表 (B/S)
- 損益計算書(P/L)
- キャッシュフロー計算書(C/S またはCSとも)
です。これらを財務三表といいます。これらの書類は、上場企業なら作成することは義務になっています。その会社のホームページの財務報告のページや、EDINETという有価証券報告書の電子開示をするサイトから必ず見ることができます。
会計に興味を持ったのであれば、いちど自社や取引先の実際の財務三表を見てみてはどうでしょうか。
ではそれぞれをざっくり理解しましょう。
貸借対照表いきなり悩む借方、貸方どっちがどっち? 結論:そんなのどうでもいいです
まずは貸借対照表です。貸借対照表、どうにもむずかしげな呼び名ですね。英語ではバランスシート、略してB/Sと書いたりします。
これは、ある瞬間の資産の状況を表すものです。言ってみれば資産のスナップショットですね。
財務の教書なんかで、いきなり出てくる「借方」、「貸方」ってやつですね。
そもそもこの名前が良くない。なんで借り?貸し?右はどっちが、左はどっち?って妙に悩んでしまいますよね。
いきなり初学者が会計を毛嫌いする原因ナンバーワンだと思います。でも大丈夫、そんなことは覚えなくてOKです。
なぜなら、この貸し借りの呼び方に意味なんて無いし、全く本質を表してませんから。
右と左の意味がわかればどうということはないB/S
このシートは左右一対になっているのですが
- 右が調達
- 左が運用
とだけ覚えておけば十分すぎます。
右側の調達に書かれていることは、
- 企業がこれまで調達した総額=会社の総資産はいくらか?
- そのうち株主からの調達した額や、これまでの儲けの総額はいくらか?
- いま現在の借金はいくらか?
という調達額とその割合のことが書かれています。
そして左側の運用には、
- 現金や商品、貸している金額、株などすぐにお金のように使える資産はどれくらいか
- 建物や機械などのすぐにはお金のように使えない資産はどれくらいか
右側で表した調達額がどのような資産になって運用されているかを表しています。
何がバランスなの?
何がバランスかっていうと、右と左がバランスなんです。
どうしてバランスするかって言うと、
右側が持ってるものの総額はどこから準備したお金かってことを言っていて
左側が持ってるもの中身だから。結局同じものを違う視点で言っているだけなんです。
で、借と貸って何よ?
さてこれだけ意味がないと言っても、どうしても「借方」「貸方」を覚えたい人は
- 「かり」の「り」の字は、左に筆をはらうから借方は左
- 「かし」の「し」の字は、右に筆をはらうから貸方は右
と覚えたければ覚えたらいいと思います。まあ覚えても意味はないんだけど。
損益計算書 利益は意見
次は損益計算書です。英語でプロフィットアンドロスステートメントの略でP/Lと書いたりします。
ちなみに、Income statement (インカムステートメント)って言い方のほうが海外ではよく使われているようです。
P/Lは、ある期間の企業の取引をすべて記録したものです。売上として計上した金額から経費を差し引いて、税金なども計算し、結局いくら儲けたってこと計算するのです。
ざっくりいうと
収益-経費=利益
を計算するものです。
ある期間で、企業側が収入とした取引と経費とした取引をその性質によって一定のルールで分けて計算します。
ここでは、何をどの経費とするかはある程度企業側の意見が入り込む余地があります。ときどきニュースで見かける粉飾決算や税金の申告漏れというのはルールと企業側の意見の不一致によるものです。
こいう性質がありますから、「利益は意見」などと言われることもあります。
では何が収益で何が経費なのか。そもそも収益とか経費って何なんだってことは少々説明が必要なので別の機会に譲ることにします。
ともあれこの場では、ある期間の儲けを計算するものと理解しておいてください。
キャッシュフロー計算書 キャシュは事実
最後は、キャッシュフロー計算書計算書です。キャッシュフローステートメントで、CSと書いたりします。
これは、ある期間での現金の出入りを表したものです。
ちょっとここで「?」ってなりましたか?
さっきP/Lで利益を計算したんだから、わざわざCSなんて作らなくてもいいんじゃないの?と。
実は、P/Lで計算した利益とキャッシュは一致しないんです。
???ってなりました?
キャッシュと利益が一致しないってどういう事?
例えばこういうことです。
商品を売り上げたとして、この金額は「売上」として計上されます。
でも、この売上をクレジットカードで支払われたとするとまだキャッシュは入金されてませんよね。
逆にこちらも、商品を仕入れた支払いが再来月とかだとするとまだキャッシュは出金してませんよね。
さらにさらに、銀行から借り入れてきたお金やお店や工場なんかのために投資しているお金。
こういう様に、実際のお金の出入りとP/Lで計算される利益とは一致しないことが多いのです。
そのために、実際にどのよな性質のキャッシュが出入りしているのか、どれくらい自由になるキャッシュがあるのかをP/Lから読み解くのは難しくなります。
それをわかりやすく計算したものがCSなんです。
キャッシュ・フローはその性質から3種類に分類されれています。
- 営業CF
- 投資CF
- 財務CF
です。
営業キャッシュ・フロー
本業によるキャッシュの出入りです。
売上をキャッシュで回収するとプラス
仕入れなどをキャッシュで支払うとマイナスになります。
その差し引き額がここに表されます。
これはイメージしやすいと思います。
投資キャッシュ・フロー
設備投資などのために出入りしたキャッシュです。
投資したときは、お金は出ていきますのでマイナスになります。
一方で、投資していた資産を売却したときはプラスになります。
財務キャッシュ・フロー
借入や返済などでキャッシュが出入りした総額を表しています。
借入や増資によってキャッシュが入ってきたらプラス
返済などでキャッシュが出ていったらマイナスになります。
これらのキャッシュ・フローのどれがプラスで、どれがマイナスかによって企業の状態を知ることもできます。
詳しい計算方法は、ここでは触れませんが損益計算書の数字から計算することができます。
会計に興味を持てた人へ おすすめ本3選
・会計のことが面白いほどわかる本 天野 敦之 (著) KADOKAWA/中経出版
イラストを多用して初心者にもわかりやすい説明に落とし込まれてます。
深く理解するために、まずは全貌を知るためにはうってつけです。
・伝説のコンサルタントが教える あまりにやさしい会計の本 後 正武 (著) ダイヤモンド社
元マッキンゼーのコンサルタントが、会計って何かを丁寧に説明しています。
管理会計にも踏み込んでいますが、小学生でもわかるような平易な説明でどなたでも読みやすい本です。
・会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語 田中 靖浩 (著) 日本経済新聞出版社
会計の専門家、公認会計士が書いた会計の歴史本。
とはいっても、小難し話ではなくリベラルアーツ、教養としての世界史と会計の歴史を重ね
なるほど、そういう背景でこういう仕組みが考えられたんだ!と納得できる読み物です。
会計の知識が少し深まったところに読むと、会計の知識と芸術、歴史なんかの教養も身につきます。
カラー版 会計のことが面白いほどわかる本<会計の基本の基本編>
カラー版 会計のことが面白いほどわかる本<会計基準の理解編>
会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語
まとめ
財務会計の入り口として、財務三表を説明しました。
B/Sはなぜバランスするのか?
P/Lってなにを計算してるのか?
CSってなんのためにかくのか?
非経理部門の方でも、この程度の知識で十分に実践に耐えられると思います。
財務三表は1期分だけ見てもピンときませんが、数年分を比較したり、同業他社と比較することでその企業の状態が見えてきます。
投資に興味のある方は、投資先の財務三表を眺めてみてはいかがでしょうか。
きっと何かしらの発見があるはずです。
今後もシリーズで続けて参りますのでよろしくおねがいします。